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【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者こそ添付文書を読むべき<登録販売者のキャリア>

【現役ドラッグストア店長直伝】登録販売者こそ添付文書を読むべき<登録販売者のキャリア>

接客をしたり「濫用等のおそれがある医薬品」の確認などでお客さまと接する機会が多い登録販売者ですが、お客さまとの接客や飲み合わせで悩んでいないでしょうか?
売場で悩んでそのまま専門書を読んだり薬剤師に聞いたりする場合もあると思いますが、添付文書の存在を忘れている登録販売者も多いと感じます。

今回は「登録販売者にとって添付文書とは何か」を考えながら添付文書との接し方を考えてみましょう。

目次

添付文書をお客さまは読んでいるのだろうか

添付文書をお客さまは読んでいるのだろうか

そもそもお客さまは添付文書を読んでいるのでしょうか。
接客時にお客さまにお聞きしてみるとわかりますが、ほとんど読まれていません。

読まれていない添付文書に書かれていることと、存在の意味を考えてみましょう。

誰のために添付文書はあるのか

添付文書は誰のためにあるのでしょう。
もちろん使用者であるお客さまのためです。

しかし、こうも考えられないでしょうか。
OTC(一般用医薬品)の販売資格である医薬品登録販売者や薬剤師のためでもある...と。

薬の成分について勉強したのだから添付文書なんて読まなくても大丈夫なのでしょうか?
添付文書はお客さまが読むもので、成分の勉強をした登録販売者は読まなくてもいいのでしょうか?

答えは、否、です。
理由は、そのOTC(一般用医薬品)を使用する基準は成分ではなく添付文書だからです。

誰のために添付文書はあるのか。
当然お客さまのために存在するのですがそのお客さまが読まない現実から考えると、そのOTC(一般用医薬品)の紹介や販売をおこなう店舗や登録販売者のためでもある...と考えることができます。

添付文書と外箱の注意の違い

添付文書でなく外箱に記載の「注意すること」を読めばいいのではないでしょうか?

確かにもっとも重要な「してはいけないこと」などは外箱に記載がありますが、記載してある量は商品の大きさに比例するため最小限に留まるOTC(一般用医薬品)も存在します。
つまり、お客さまへの注意事項に関しては外箱の記載事項で対応できても、接客時の踏み込んだ質問などでは添付文書を読まないとわからない事も多々存在するのです。

このため添付文書は確認しておくべきですし、接客時に質問があった時には閲覧しやすいよう準備しておくのがお勧めです。
もしネット環境を利用できる端末があるのなら「商品名 添付文書」と検索をおこなえばすぐに閲覧できます。

自身が使用しているOTC(一般用医薬品)があるのなら保管しておくのもお勧めですが改訂されることもあるので、できれば最新の添付文書が閲覧できるインターネットを推奨します。

そもそも添付文書とは

そもそも添付文書とは薬の知識がない使用者でも理解しやすいよう、薬の使い方が記載してある文書です。
ですから登録販売者や薬剤師でなくても理解できる前提で記載されています。

そしてそのOTC(一般用医薬品)を使用するにあたり注意すべき持病や他のOTC(一般用医薬品)を含む医薬品の使用に関する注意、連用に関する注意、保管や保存上の注意が記載されています。
近年の添付文書はイラストを用いたものも多く、薬の知識がなくても読んで理解することは充分に可能です。

しかし実際にはほとんど読まれていないのが添付文書です。
そもそも添付文書は「何かあった時に読む」ものではなく「使用する前に読む」ものです。

交通事故のリスクを抑えるために交通ルールを勉強するのと同じことで、事前に読むことで使用者のリスクを軽減し効果を最大化するためのツールが、添付文書なのです。

ではなぜ添付文書は読まれないのでしょう。

お客さまが把握している情報は何だろう

お客さまが把握している情報は何だろう

お客さまはどのようにOTC(一般用医薬品)を選択し使用しているのでしょう。
その心理をお客さまの立場で考え、添付文書との接し方を考えていきましょう。

コマーシャルの功罪

お客さまが商品と直に接するのは店頭ですが、その店頭に足を運んでいただくためにメーカーはコマーシャルを使います。
テレビCMなら15秒に、雑誌やネットの広告なら1枚の画像に商品特徴を詰め込みます。

店頭のPOPに情報を詰め込みすぎると訴求力に欠けることは皆さんもご存じだと思いますが、テレビCMも広告も同じことで主なメリットのみの訴求となってしまうのです。

風邪薬なら「10種の有効成分が」「最高濃度」などのパワーワードが消費者に刺さりやすく多用されますし、「ひき始めに」「くしゃみ〇回で」などの理解しやすい訴求の商品も人気です。

薬にはメリットとデメリットが存在しますが、メーカーからはこのような制約もありデメリットはテレビCMでは最後の「医薬品は用法容量を守り...」のような一瞬の告知のみに留まっています。

薬はデメリットがメリットを上回ってしまうと「毒」となりますが、薬でもっとも重要な「デメリット」の存在を添付文書や登録販売者や薬剤師に委ねざるを得ないのです。
店頭で資格者からの接客をされず添付文書を読まない...というパターンがもっとも多いのですが、使用者がデメリットを把握せずに使用しているのが現状だと考えられます。

パッケージの功罪

同じことが商品パッケージにもいえます。
パッケージはお客さまへの訴求の塊で、様々な商品の中でもわかりやすくする必要があるためCM以上にインパクトがあるものも少なくありません。

限られた成分の組み合わせの中で新商品を開発しリニューアルをおこないながら売上をつくらなければいけないのでメーカーの企業努力の結果なのですが、これも消費者にデメリットを伝えることへの足かせとなる場面が多くなっています。

つまり、効果を求めるお客さまの中にデメリットの認識がかなり少なかったり、後半で踏み込みますがヘルスリテラシーや正常性バイアスがさらに働いてしまう原因となりかねないのです。

パッケージにデメリットを表記することはビジネス面から考えて「ゼロ」です。
ラーメン屋の看板に「肥満になりやすい」と記載するようなものですから。

このメリットのみの訴求でお客さまは商品選定をおこなう、という前提で接客をおこなう必要があります。

POPの功罪

店頭に設置するPOPもほぼメリットのみとなってしまいます。
ここでデメリットを記載したらどうなるのでしょう。

(例)

  • 高血圧の方は使用できない医薬品です
  • 糖尿病の方は注意が必要な風邪薬です
  • 使用後の自動車運転は法律で禁止されています

本来だと書かないといけないようなことも、実際に記載するとビジネス的にマイナスしかありません。
また禁忌事項をすべて記載するスペースもないので優先順位をつけられないという問題もあります。

商品アピールの役目があるPOPも、個人的にコメントを記入し辛いと考えています。

CM、パッケージ、POPとメリットのみ印象付けられてしまったお客さまに、デメリットを把握して正しく使用していただくにはどうしたらいいのでしょう。

そう、接客と添付文書です。

添付文書を要約して伝えよう

添付文書を要約して伝えよう

お客さまが安心して自分の体調と症状に合った医薬品を使用し、QOLを低下させない商品提案をおこなうことは登録販売者の必須の業務です。

では具体的な行動と考え方をあげていきます。

誰もが理解できるよう書かれている添付文書

「添付文書」と構えてしまったり苦手意識からあまり読んでいない登録販売者もいるはずです。
ですが先に書いた通り添付文書は前提として成人なら誰でも理解できるように書かれているツールです。

登録販売者なら必ず理解可能な内容ですし、メイン商品の添付文書は必ず目を通しておくべきです。
中には保存や保管上の注意で思わぬ落とし穴のような内容が書かれているOTC(一般用医薬品)も存在します。

  • PTP包装でも袋を開封したら使用期限6カ月のもの
  • 冷蔵庫保管が可能な目薬と不可能な目薬の存在
  • 開封後の期限があるため毎日使用しないと使い切れない大容量

また、点鼻薬との併用で「機械類の運転操作」が禁忌となる目薬など「してはいけないこと」で注意すべき内容も存在します。

使用者のQOL低下どころか命にかかわる可能性があるOTC(一般用医薬品)も存在しますが、これはしっかり添付文書を読んでおく必要があるのです。
このような内容が添付文書には一般消費者にもわかりやすく記載されているのです。

もっとも落とし穴にはまりがちなのは勉強熱心で成分に対する知識が深い登録販売者です。
例えば2つの商品の同時使用で成分同士の相互作用で大きな問題がなかったとしても、添付文書で「他の〇〇と併用しないこと」と禁忌になっている場合もあります。

それぞれのOTC(一般用医薬品)で理由は異なりますが、わたし達がもっとも尊重しないといけないのは「法律」と「添付文書」なので充分に注意する必要があります。

リテラシーとバイアスの大きな壁

ではなぜお客さまは添付文書を読まないのでしょうか?
接客でデメリットを説明しても伝わらないのでしょうか?

それは人間の心理に原因があります。
「リテラシー」と「バイアス」です。

まずリテラシーとは「ある分野に関する知識や能力を活用する力」のことです。
そして医薬品などの健康分野のリテラシーを「ヘルスリテラシー」といい、「自分にあった健康情報を探し、理解し評価したうえで使える力」を指します。

つまり効能と副作用を理解し、自身の健康状態と天秤にかけ、メリットがデメリットを上回ると判断できることです。
この「天秤にかける」という行為に個人差がでるのです。

そもそも外箱や添付文書を読むかどうか、専門家の意見を聞くかどうか、という問題もヘルスリテラシーが影響しています。

そしてバイアスは偏見や先入観のことで多数存在しますが、ここでは「正常性バイアス」が大きな影響を持っています。
正常性バイアスとは「自分は大丈夫」「大したことないだろう」と判断してしまうことです。

つまり、添付文書の存在を知っていても「自分は大丈夫」と思ってしまったり、持病があっても「大したことないだろう」と判断してしまうのです。

  • 高血圧だけど今まで大丈夫だったから問題ない
  • 糖尿病だけど自分に合っているOTC(一般用医薬品)だからメリットの方が大きい
  • 仕事で運転するけどいつも眠くならないから大丈夫

皆さんも接客で経験があるのではないでしょうか?
持病はないと聞いていたのに説明していたら高血圧の申告をされた...などよくある事例ですが、これが正常性バイアスです。

このリテラシーとバイアスの問題は特定の人に起こるのではなく、程度の差はあるものの誰しもが該当する問題なのです。
この大きな障壁を越える必要がありますが、どちらもマイナスに働いてしまうと添付文書どころか外箱も確認せずに使用してしまうのです。

OTC(一般用医薬品)の使用判断は最終的に使用者で、販売側の責任となるのは「判断ミス」や「確認漏れ」とはなりますが、通常の販売や使用でお客さまに責任を押し付けることはあってはなりません。

お客さまにとってデメリットがメリットを上回ることはできる限り少なくしないといけないのです。

お客さまにとって真のメリットとは

お客さまにとって真のメリットは「デメリットを最小化し、メリットを最大化すること」に他なりません。
メリットを最大限にするには「効能効果」を登録販売者がわかりやすく説明し、お客さまが納得して購入、使用され、症状が改善することが必要です。

それに対してデメリットを最小化するにはお客さま自身で体調や持病を意識し、情報を理解したうえで判断すること、となります。
しかし現状のOTC(一般用医薬品)の販売や商品販促において使用者がデメリットを意識することは非常に困難です。

お客さまにデメリットを理解していただき、メリットを最大化するには商品特徴をしっかり理解していただく必要があります。
そしてひとりでも多くのお客さまにデメリットを認識していただくには登録販売者が添付文書に触れる機会を増やす事だと考えています。

わたし達登録販売者の立場からみても添付文書を尊重することは法律的に自らの身を守ることにもつながります。
もし大きな健康被害が起きてしまっても、添付文書で指示されていたり禁忌でなかった場合は責任に問われるようなことにはならないからです。

つまり添付文書はお客さまのQOL向上と登録販売者の立場を守るツールなのです。

さっそく今日から添付文書を確認する習慣をつけてみませんか?

ケイタ店長(登録販売者)

執筆者:ケイタ店長(登録販売者)
ドラッグストア勤務歴20年、一部上場企業2社で合計15年の店長経験を活かし、X(旧Twitter)などで登録販売者へのアドバイスや一般の方への生活改善情報の発信を行っている。X(旧Twitter)フォロワー数約5,000人。