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【現場で使える!漢方】登販向け:冷えを解消する漢方薬のおすすめは?

寒さが増し、カイロや湯たんぽなど、防寒グッズをお求めになるお客さまが増える時期ですね。

「冷え」自体は病院では特別な疾患に由来しない限り、治療の対象にはなりませんが、日常生活の中で悩んでいる人は多くいらっしゃいます。

初回のテーマは「冷え」。登録販売者さんがご自身の店頭にある漢方薬を「自信をもって」「わかりやすく」患者さまにご提案できるよう、漢方の選び方や特徴を解説します。

●扱う漢方
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
八味地黄丸(はちみじおうがん)
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)

目次

登録販売者が覚えておきたい、冷えのケアは相談者さまの体質ケア

登録販売者が覚えておきたい、冷えのケアは相談者さまの体質ケア

漢方での「冷えのケア」は「相談者さまの体質ケア」です。同じ「冷え」という症状でも対処法は体質によって異なります。この体質をケアする事は冷えの解消以外にも副次的に他の不調が良くなることも多々あります!
後述しますが、例えば瘀血タイプの冷えの方に桂枝茯苓丸をしようとすると末端の冷えだけでなく、肩こりが解消したり月経のトラブルが緩和されたりする、といったかたちです。

冷えの解消のニーズはあるけれど、根本的な緩和に目を向ける方が多くありませんので、ポップを用意してご自身のお悩みに気付いてもらったり、寒い日の会話の切り口として冷えのお悩みを伺ってみるとよいでしょう。

また、多くのお客さまはパッケージに書いてある使用目的を参考にご自身で漢方を選びます。
使用目的を確認し、その方にあった商品選びができているか、判断できるようになるとお客さまとの関係性が一歩深まります。

冷えの原因となる証の代表を押さえていきましょう。

冷えの原因となる漢方の体質(証)

冷えの原因となる漢方の体質(証)

東洋医学の考えでは
身体の中を気(き)・血(けつ)・水(すい)が巡る、と捉えます。
そして生命力を司る充電に陰(いん)と陽(よう)があります。

漢方のご提案は、これら気血水や陰陽の不足(虚)や渋滞(実)を見極めて対処することが大切になります。

この中で「冷え」と関わる代表的な体質(証)を3つ取り上げます。

状態
瘀血(おけつ)
血(けつ)が滞っている状態
血虚(けっきょ)
血(けつ)が不足している状態
陽虚(ようきょ)
陽(よう)が不足している状態

それぞれの体質(証)の特徴

それぞれの体質(証)の特徴

「冷え」と一言に言っても、東洋医学的にその原因は様々です。
冷えが起こっている原因となる体質=証を理解することでその方の冷えタイプに合った漢方をご提案する事ができます!それぞれの冷えの特徴を見ていきましょう。

瘀血の冷えの特徴

末端まで血流が巡りづらい「末端冷え」が特徴的です。冬場には手先や足先がとくに冷える方が多いです。また、瘀血体質の方は上半身に熱が偏在していることが多く、上半身は暑く、下半身は冷えている、昔のお風呂のような状態(お若い方はご存じないかも!)という状態になりやすいです。

こうした方の上半身に偏在する熱には、瘀血を解消する漢方で全身に血流を巡らせてあげましょう。こうすることで熱の偏在も解消し下半身にも熱が巡ります。

瘀血の冷えのポイント

  • 末端がとくに冷える
  • 上半身は冷えが強くない
  • 冷えている割に長風呂が苦手

瘀血の冷えに使用する漢方薬の例:桂枝茯苓丸

血虚の冷えの特徴

全身を栄養する「血(けつ)」が不足することで冷えやすい傾向にあります。
血が不足しているため、手足だけでなく、身体全体が十分に栄養されず、外からの寒邪(かんじゃ=寒さの邪気)の影響を受けやすい状態です。寒邪の影響で、冷え+痛みなど他の症状を伴う事もあります。

血虚と陽虚の冷えの違いは難しさを感じてしまうかもしれませんが血虚は低体温というより、寒さの影響を受けやすい状態です。

血虚の冷え性の方はお身体を栄養する「血」が不足することで冷えやすくなっているので、「血」を補う漢方薬やお食事を意識することが大切です。

血虚の冷えのポイント

  • 全身が冷えやすいが平熱は36度台
  • 冷え+痛み、冷え+しもやけなど冷え+αの症状を伴う
  • 寝不足や月経時など、「血」の消耗時に悪化する

血虚の冷えに使用する漢方薬の例:当帰四逆加呉茱萸生姜湯

陽虚の冷えの特徴

陽虚とはいわばお身体のボイラーの火力自体が弱いようなイメージ。平熱が35℃台というような低体温気味だったり、夏場でも腹巻を欠かせないような強い冷えを感じやすいタイプです。

陽虚の方は生まれつきな体質であることも多く、小さなころからアイスクリームなどの冷たいものが苦手だった、という方も少なくありません。冷えは全身に感じやすいため、冷えると下痢をしたり、火力不足で代謝が落ちていることによりむくみを感じやすかったりする方も見受けられます。

陽虚の冷え性の方は、お身体のボイラーの火力自体を上げる必要があるため、根気よい取り組みが必要となります。まずは冷えを徹底的に避け、漢方薬も今回ご紹介するものの他、動物由来の漢方薬も考慮することもおすすめします。

陽虚の冷えのポイント

  • 平熱が35℃台になることがある
  • 全身に冷えを感じやすい
  • 冷えを感じるのが冬だけでなく季節問わず冷えやすい
  • 判断に迷う場合、ご高齢の方の冷えは腎陽虚の漢方を選ぶ

陽虚の冷えに使用する漢方薬の例:八味地黄丸・牛車腎気丸

Topic
八味地黄丸=六味丸+附子+肉桂
六味丸は腎陰虚に対する漢方薬でそこに身体を強く温める附子と肉桂を加えると腎陽虚に対する八味地黄丸になります。八味地黄丸は腎陽虚に対する日本漢方の代表漢方です。
牛車腎気丸=八味地黄丸+牛膝+車前子
牛膝+車前子を加えることで下半身のむくみを考慮した漢方になっています。
前述の通り、陽虚体質の方は代謝が落ちることにより水分代謝が低下し下半身に「水(すい)」が貯まることがよくあります。「水」は冷えて貯まっていきます。
陽虚の方で「下半身が浮腫む」「足腰がだるい」など下半身に「水」が貯まっている症状を伴う方は牛車腎気丸で余分な「水」を巡らせることで冷えがより緩和しやすくなります。

プラスαの養生提案でよりお客さまに愛される登販に!

プラスαの養生提案でよりお客さまに愛される登販に!

同じ冷えでも、体質によって適切な漢方は異なりましたね。
ケアのコツも体質に沿った物を行うことが大切です。
例えば、「瘀血体質の人は、上半身が暑く下半身が冷えていることが多い」とお伝えしましたが、この瘀血体質の方が、ボイラーの火力が弱めの陽虚体質の方と同じケアに取り組むとのぼせあがってしまう可能性があります。

それぞれの体質に沿ったケアを見ていきましょう!

瘀血

まずは末端まで血流が行くように、温生(身体を温める方向に働く)の食材を心掛けましょう。桂枝茯苓丸の「桂枝」はシナモン。紅茶などのお好きな飲み物に、スーパーで手軽に手に入るシナモンパウダーをささっと振りかけるだけで、より末端まで巡りやすくなります。運動習慣のある方はとくに下半身の大きな筋肉(お尻や太もも)に負荷をかけてあげると瘀血のケアにつながります。

お風呂ものぼせが気になる際は温度を1度下げる。または、のぼせたら洗面器をひっくり返して椅子代わりにし、半身浴のようにしてみてください。下半身がしっかり温まってからあがるのがおすすめです。のぼせた場合は切りあげましょう。

血虚

まずはタンパク質の摂取を心掛けることが「血(けつ)」を増やすことにつながります。とはいえ、胃腸負担をかけてはいけませんので、毎食の食事のタンパク質で無理のない量を摂り、十分でない場合は間食でナッツやチーズ、ドライフルーツを活用するのもおすすめです。

月経時や寝不足時は血虚の方はさらに弱りやすいので、いつも以上に休息をとる、お食事に気を付けてみてください。

陽虚

陽虚の方は冷えが強く出るため、「加温」に意識が行きがちです。しかし、外部からずっと熱を与えていてもご自身で熱を産みだす体質にはつながりません。まずは「加温」よりも「保温」。外部から熱を与えたらほどほどでやめて、保温を心掛けてみてください。足首・手首・首、この3つの首をしっかり隠して保温してください。

お休みの際も、電気あんかのように加温し続けるものよりも、自然と温度が下がる湯たんぽをおすすめします。

Topic
葛根湯で温めるのはありか?
葛根湯には、発散性の強い麻黄や葛根といった生薬が含まれています。
風邪の引きはじめの悪寒の強いときに一気に寒気を散らす漢方なので、冷え対策として常習的に使用するのはお身体に負担になってしまいます。

まとめ

今回は冷えの漢方の選び方をご紹介しました。

冷えのお悩みは、「これが私の体質だから...」と諦めている方も少なくありません。
外からの加温も大切ですが、冷えにくいお身体作りを提案できると、大きな強みになると思います!お客さまに対して、どのような順序で完結に、問診をとるか、しっかりと組み立てておくとスムーズに漢方の提案まで完結することができます。

漢方の提案には商品知識だけでなく、お客さまから症状についてお話いただく「カウンセリングスキル」も非常に大切になります。実践により磨かれていきますので、積極的にお客さまとお話されるとよいと思います。

商品のご提案だけでなく、合わせて生活養生もお伝えし、「次回来店時に、ご様子お聞かせくださいね。」とお伝えすると漢方の販売がただの「物販」ではなく、お客さまとっての「体験」となり、ファン化につながります。

より深いカウンセリングや問診スキルを学び的確な処方選択を目指す場合には研鑽が欠かせません。ご興味のある方は協会ホームページを参照ください。

執筆者:猪子英恵(いのこ はなえ)

執筆者:猪子英恵(いのこ はなえ)
薬剤師・国際中医専門員
臨床漢方カウンセリング協会理事
神奈川ME-BYOスタイルアンバサダー
集英社LEEキャラクター

首都圏を中心に全国の医療機関で漢方外来を受託。
「現場で使える」漢方とカウンセリングスキルの講座を
薬剤師・登録販売者に向けて開催。
臨床漢方カウンセリング協会

【執筆、監修など】
・わかさ出版ムック本 ハトムギ水 執筆、監修
・セントラルメディエンスコミュニケーションズ出版 月刊雑誌「からだにいいこと」2020年1月号 ハトムギ美容記事 執筆、監修
・株式会社ハルメクホールディングス出版 月刊雑誌「ハルメク」2021年1月号ハトムギ美容記事 監修
・第一三共ヘルスケアダイレクト株式会社 化粧品「RICE FORCE」web ボディシミに注意!記事執筆